請求書照合の完全ガイド|確認すべきポイントと効率化の方法
請求書照合とは何か、何をチェックすべきかを徹底解説。確認と照合の違い、誤請求・二重払いを防ぐためのポイント、Excel・AI-OCRによる効率化手法まで、経理担当者向けに詳しく紹介。
「請求書が届いたら、内容を確認して支払い処理をしてください」
経理担当として、こんな指示を受けることは日常茶飯事でしょう。しかし、ここで問題です。
「確認」と「照合」、あなたは区別できていますか?
この記事では、請求書照合の基本から効率化の方法まで、経理担当者が知っておくべきすべてを解説します。請求書処理を効率化したい方、ミスを減らしたい方は必見です。
「確認」と「照合」は別物
請求書が届いたとき、多くの人がやる作業:
- 請求書の日付を見る(確認)
- 登録番号があるか見る(確認)
- 発注した内容・金額と合っているか比べる(照合)
1と2は「形式チェック」であり、書類単体で完結します。しかし、3番目は「発注書」や「納品書」と突き合わせて初めて判断できます。
確認と照合の違い
| 項目 | 確認(Verification) | 照合(Matching) |
|---|---|---|
| 対象 | 請求書単体 | 請求書 × 発注書 × 納品書 |
| 目的 | 形式的な正しさを見る | 取引の正当性を検証する |
| 例 | 日付、登録番号、押印 | 金額、数量、品目 |
| 時間 | 短い(1件1分) | 長い(1件5分以上) |
| 難易度 | 低い | 高い |
| 自動化 | 容易 | 困難 |
| 担当者 | 誰でも可能 | 経験者推奨 |
最も重要で、かつ最も時間がかかるのが「照合」です。
なぜ照合が重要なのか
照合は単なるチェック作業ではなく、以下の役割を担っています。
| 役割 | 詳細 | 効果 |
|---|---|---|
| コスト管理 | 過払いを防ぐ | 利益確保 |
| リスク管理 | 不正を防ぐ | ガバナンス |
| コンプライアンス | 監査対応 | 法令遵守 |
| 資金管理 | 正確な支払い | キャッシュフロー |
請求書照合で確認すべき5つのポイント
1. 取引先情報
| チェック項目 | 詳細 | リスク | 確認方法 | 頻度 |
|---|---|---|---|---|
| 会社名・住所 | 正しいか | 偽装請求 | マスタ照合 | 毎回 |
| 振込先口座 | 登録済みのものと一致しているか | 振込詐欺 | マスタ照合 | 毎回 |
| インボイス登録番号 | 有効か(国税庁DBで確認) | 仕入税額控除否認 | API照合 | 毎回 |
| 代表者名 | 変更されていないか | なりすまし | 登記確認 | 初回 |
| 連絡先 | 正しいか | 連絡不能 | マスタ照合 | 初回 |
特に口座情報は要注意。取引先を装った「振込先変更」詐欺が増えています。
2. 品目・商品名
| チェック項目 | 詳細 | 発生頻度 | 対策 | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 品目一致 | 発注した品目と一致しているか | 高 | 発注書照合 | 中 |
| 品番・SKUコード | 合っているか | 中 | コード照合 | 低 |
| 表記揺れ | 「Aセット」と「商品A」が同じものを指している場合も | 高 | AI照合 | 高 |
| サービス内容 | 業務委託の場合、作業内容が明確か | 中 | 契約書照合 | 高 |
| 単位 | 個、セット、箱など | 中 | 目視確認 | 低 |
3. 数量
| チェック項目 | 詳細 | 注意点 | 対策 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 数量一致 | 発注数量と請求数量は一致しているか | 最重要 | 発注書照合 | 高 |
| 納品書との照合 | 納品書に記載の数量と合っているか | 必須 | 3点照合 | 高 |
| 部分納品 | どこまでが今回の請求分か | 分割納品時 | 管理台帳 | 中 |
| 単位 | 個、セット、箱など単位は合っているか | — | 目視確認 | 低 |
| 返品・交換 | 返品分が控除されているか | — | 履歴確認 | 中 |
4. 単価・金額
| チェック項目 | 詳細 | 影響 | 対策 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 単価一致 | 見積書・契約書と単価が一致しているか | 直接損失 | 見積書照合 | 高 |
| 割引適用 | 割引やボリュームディスカウントが正しく適用されているか | 過払い | 契約条件確認 | 高 |
| 消費税率 | 正しいか(軽減税率8%か標準税率10%か) | 税額誤差 | 品目確認 | 中 |
| 端数処理 | 四捨五入・切り捨て・切り上げ | 微差 | 契約確認 | 低 |
| 為替 | 外貨取引の場合、レート確認 | 差損益 | レート照合 | 中 |
5. 支払条件
| チェック項目 | 詳細 | 確認方法 | 対策 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
| 支払期日 | 契約どおりか | 契約書照合 | スケジュール管理 | 高 |
| 振込手数料 | どちらが負担するか | 契約書確認 | 条件明記 | 中 |
| 早期支払い割引 | 適用有無 | 見積書確認 | 条件確認 | 低 |
| 分割払い | 分割条件は正しいか | 契約書確認 | 台帳管理 | 中 |
請求書照合をサボると何が起きるか?
「忙しいから、金額だけ見てOKにしよう」
そう思いたくなる気持ちはわかります。しかし、照合を怠ると以下のリスクが発生します。
リスク1:過払い
単価ミスや数量ミスにより、本来より多くの金額を支払ってしまう。
実例:
| ケース | 影響 | 年間損失例 | 発生頻度 | 発見難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 見積もりは@1,000円だったのに、請求書は@1,100円 | 10%過払い | 月100万円×10%×12=120万円 | 中 | 高 |
| 100個発注したのに、120個分請求 | 20%過払い | 月50万円×20%×12=120万円 | 中 | 中 |
| 1回のみの請求なのに、翌月も同じ請求が届いて支払い | 2倍払い | 月30万円×12=360万円 | 低 | 低 |
| 割引が適用されていない | 5%過払い | 月200万円×5%×12=120万円 | 中 | 高 |
リスク2:二重払い
同じ請求書が複数のルートで届き、両方とも支払ってしまう。
発生しやすいパターン:
| パターン | 発生頻度 | 防止策 | 効果 | 発見タイミング |
|---|---|---|---|---|
| メール添付 + 郵送で二重に届く | 高 | 一元管理 | 高 | 支払前 |
| 経理と現場の両方で支払処理をしてしまう | 中 | 承認フロー | 高 | 支払後 |
| 再発行された請求書を「別件」と誤認 | 中 | 番号管理 | 高 | 支払後 |
| システム重複登録 | 低 | マスタ管理 | 高 | 支払後 |
リスク3:監査での指摘
上場企業や大企業では、内部監査・外部監査で「3点照合」の実施状況が確認されます。
| 指摘内容 | 影響 | 対応コスト | 重要度 | 対策 |
|---|---|---|---|---|
| 照合の証跡がない | 内部統制の不備 | 体制整備 | 高 | システム化 |
| 差異発生時の対応履歴がない | 監査上の問題 | 証跡管理 | 高 | ログ保存 |
| 承認フローが不明確 | ガバナンスの問題 | フロー整備 | 高 | ワークフロー |
| 職務分掌がない | 統制上の問題 | 組織整備 | 高 | 権限分離 |
リスク4:不正の見逃し
悪意ある不正を見抜けないリスクもあります。
| 不正パターン | 詳細 | 損害規模 | 防止策 | 発見難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 架空請求 | 実在しない取引への支払い | 数十万円〜 | 3点照合 | 中 |
| 水増し請求 | 取引先と結託した過大請求 | 数百万円〜 | 3点照合 | 高 |
| 個人への流出 | 私的な支出を会社経費として処理 | 数万円〜 | 承認フロー | 中 |
| 架空取引先 | 実在しない業者への支払い | 数十万円〜 | マスタ管理 | 高 |
手作業での請求書照合 ─ 3つの限界
限界1:形式チェックで力尽きる
インボイス制度以降、形式チェック(登録番号の確認など)の負担が増えました。
その結果、肝心の「内容照合」がおろそかになり、過払いや二重請求を見落とすケースが増えています。
| チェック項目 | 所要時間 | 負担感 | 自動化可能性 |
|---|---|---|---|
| インボイス登録番号確認 | 2分/件 | 高 | ◎ |
| 日付・金額確認 | 1分/件 | 中 | ◎ |
| 内容照合 | 5分/件 | 高 | ○ |
| 差異調査 | 10分/件 | 高 | △ |
限界2:表記揺れに対応できない
同じ取引先でも、書類によって表記が異なることがあります。
| 発注書 | 納品書 | 請求書 | 判定 | 対応 |
|---|---|---|---|---|
| 株式会社ABC | (株)ABC | カ)エービーシー | 同じ | AI照合 |
| 山田太郎 | 山田 太郎 | ヤマダタロウ | 同じ | AI照合 |
| 商品A-123 | 品番A123 | A123セット | 同じ | AI照合 |
| 2026/01/23 | 2026年1月23日 | R8.1.23 | 同じ | 正規化 |
Excelで突合しようとしても、完全一致しないためエラーになります。
限界3:件数が増えると破綻する
| 件数 | 1件あたり | 合計時間 | 残業 | 担当者数 |
|---|---|---|---|---|
| 10件 | 5分 | 50分 | — | 1名 |
| 100件 | 5分 | 500分(8時間以上) | 必須 | 1名 |
| 500件 | 5分 | 42時間 | 必須 | 2名 |
| 1000件 | 5分 | 83時間 | 不可能 | 3名以上 |
月末に作業が集中し、残業が常態化します。
請求書照合を効率化する3つのアプローチ
アプローチ1:Excelでの標準化
VLOOKUPやXLOOKUPを使った突合
=VLOOKUP(A2, 発注書!A:D, 4, FALSE)
| メリット | デメリット | 推奨企業 | コスト |
|---|---|---|---|
| 導入コストゼロ | 表記揺れに弱い | 〜50件/月 | 無料 |
| すぐに始められる | 属人化しやすい | — | — |
| カスタマイズ自由 | 大量データに弱い | — | — |
アプローチ2:会計システムの照合機能
freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトには、請求書と取引データを照合する機能があります。
| メリット | デメリット | 推奨企業 | コスト |
|---|---|---|---|
| 仕訳まで一気通貫 | 完全一致が前提 | 導入済み | 月額 |
| 既存ワークフローに統合 | カスタマイズ性が低い | — | — |
| サポートあり | 月額費用 | — | — |
アプローチ3:AI-OCR + 自動照合
最新のAI技術を活用した照合
- 請求書(PDF・画像)をアップロード
- AI-OCRがデータを自動抽出
- 発注書・納品書と自動照合
- 差異がある箇所だけを人間が確認
| メリット | デメリット | 推奨企業 | コスト |
|---|---|---|---|
| 表記揺れに強い | ランニングコストがかかる | 100件/月以上 | 月額 |
| 大量処理が可能 | 100%の精度は保証されない | — | — |
| 属人化しにくい | 導入検討が必要 | — | — |
Totsugoで実現する「AI流」の分業
Totsugoは、AI技術を活用した請求書照合ツールです。
1. 形式チェックは「一瞬」
AI-OCRが日付・登録番号・必須項目を自動スキャン。不備があればアラートを出します。
2. 内容照合は「自動」
過去の「注文メール」や「発注CSV」をTotsugoに登録しておけば、届いた請求書と自動で突き合わせを行います。
3. 「間違い探し」からの解放
| 従来 | Totsugo導入後 | 効果 | 削減率 |
|---|---|---|---|
| 全項目を目視確認 | AIが自動照合、差異だけ確認 | 時間削減 | 90%削減 |
| 1件5分 | 1件30秒 | 速度向上 | 90%削減 |
| 月末に残業 | 定時で帰れる | QOL向上 | — |
導入効果の試算
月100件の請求書を処理する企業の場合:
| 指標 | 導入前 | 導入後 | 削減率 |
|---|---|---|---|
| 照合作業時間 | 8時間/月 | 1時間/月 | 87% |
| ミス発生件数 | 3件/月 | 0件/月 | 100% |
| 残業時間 | 10時間/月 | 0時間/月 | 100% |
まとめ:請求書照合は「確認」で止まらない
請求書照合は、単なる「確認作業」ではありません。
| 目的 | 詳細 | 効果 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 過払いを防ぐ | 金額・数量の照合 | コスト削減 | 高 |
| 二重払いを防ぐ | 重複チェック | 損失防止 | 高 |
| 不正を防ぐ | 取引の正当性検証 | ガバナンス | 高 |
| 監査に対応する | 証跡の記録 | コンプライアンス | 高 |
これらすべてを担う、経理業務の**要(かなめ)**です。
AIに「間違い探し」を任せて、あなたは判断に集中しましょう。